発進のたびに車体が揺れる。メーターに「トランスミッション高温」と表示された。Honda販売店でクラッチ交換を提案された——グレイスハイブリッド(GM4/GM5)でこの状況なら、修理や売却を即決する前に確認することがあります。
この不具合には、Hondaが公表したデュアルドライクラッチ(DDC)の保証期間延長があります。ただし、GM4/GM5なら全車対象という制度ではありません。対象車台番号、初度登録から9年という期限、Honda販売店で確認される偶数段側の対象事象が条件です。
順番は、①安全を確保→②対象車台番号を確認→③9年の期限を確認→④Honda販売店で診断→⑤有償なら修理見積と現状査定を比較です。
こんな症状が出たらDCTを点検したい

グレイスハイブリッドは、7速DCTにモーターを組み合わせた「SPORT HYBRID i-DCD」を搭載しています。次の症状はDCTやクラッチを点検するきっかけです。
発進・変速時のジャダー。 発進時に車体が前後へ揺れる、突っかかるような変速、低速でガクガクするなどの症状です。変速感だけで故障とは断定できませんが、以前より悪化した、強い振動が続く、警告を伴う場合は診断を受けてください。
「トランスミッション高温」警告。 Hondaの保証延長ページには、高温警告が表示され、発進・走行しづらくなる事象が記載されています。坂道渋滞などで警告が出た場合は、安全な場所へ停止してクラッチを冷却してください。
DやRで動けない、発進できない。 Hondaのi-DCD車向け案内には、高温状態で走行を続けると駆動力が制限され、最悪の場合は前進または後退できなくなるおそれが記載されています。異臭、強い衝撃、加速不良を伴う場合も、自走で原因を確かめようとせず、Honda販売店やロードサービスへ相談してください。
| 状態 | その場で優先すること | 次の確認 |
|---|---|---|
| 悪化するジャダー・変速違和感 | 無理な微速走行を避ける | 車台番号と保証期限、点検予約 |
| 高温警告 | 安全な場所に停止し冷却 | 警告が消えても販売店へ相談 |
| 発進・走行困難 | 自走を中止 | ロードサービス、保証・修理診断 |
焦げたような異臭や車体下部の油分も点検を急ぐ理由になりますが、それだけでDDCのフルード漏れと断定することはできません。
修理費用はいくらかかるか
保証が使えない場合、DDC交換は30万円台がひとつの参考水準です。同じi-DCD系フィットの整備事例には、部品254,000円、工賃60,000円、税込総額345,400円という例があります。
これはグレイスの全国一律価格ではありません。車両の状態、交換範囲、追加部品、診断・学習作業、工場の工賃で総額は変わります。
| 選択肢 | 費用の見方 | 確認すること |
|---|---|---|
| Honda販売店でDDC交換 | 同系統の30万円台事例を参考に個別見積 | 保証対象の診断を先に受ける |
| i-DCD対応の整備工場 | 部品、脱着、診断・学習を含む総額で比較 | 作業実績、設備、修理保証 |
| 中古・リビルト部品 | 安くなる可能性はあるが個体差が大きい | 適合、部品保証、学習作業、再修理条件 |
見積書では「DDCだけか、トランスミッション一式か」「診断・学習作業を含むか」「追加費用が出る条件」を確認してください。
なぜこの不具合が起きるのか
Hondaが保証延長ページで説明している直接の機序は、偶数段クラッチのベアリングでグリス充填量が少ない状態のまま長時間の高速走行を繰り返すと温度が上昇し、樹脂ピストンとシールが損傷。フルード漏れによって偶数段クラッチが滑り、高温警告や発進・走行しづらい症状が生じるというものです。
一方、Hondaはi-DCD車について、坂道の渋滞などでアクセル操作による微速走行を続けるとクラッチ温度が上がるため、ブレーキを使って停止・発進するよう案内しています。高温警告が出た場合は安全な場所で停止し、冷却することも示しています。
この2つは分けて理解します。保証延長の公表原因は、対象部品のグリス量と長時間の高速走行に関するもの。坂道渋滞の案内は、i-DCDを高温にしにくい運転方法に関するものです。前オーナーの乗り方だけで保証対象故障の有無や「当たり外れ」が決まるとは断定できません。
また、奇数段側、制御系、12V電源など別の原因でも似た症状が起こり得ます。症状だけで原因や保証適用を決めつけないことが重要です。
【最重要】9年保証の対象車と確認方法
Hondaは2020年7月17日、旧型フィットなど7車種を対象にDDCの保証期間延長を発表しました。通常の「初度登録日から5年または10万km以内」から、初度登録日から9年へ延長されています。延長後の欄には走行距離条件の記載がありません。
公式の作業内容は、訴えがあった場合にHCA偶数段側リザーバータンクの液量を点検し、液量が減少している車はDDCを良品へ交換するというものです。
ここが重要です。この保証延長はDDCの不具合全般を一律に無償修理する制度ではありません。 Hondaが公表している対象事象は偶数段クラッチ側のフルード漏れ・滑りです。奇数段側や制御系など別の原因と診断された場合、この保証延長による無償交換の対象にならないことがあります。2015年式シャトルのオーナーレビューにも、販売店から奇数段側の故障であるため保証延長の対象外と説明された、という報告があります。ただし、これは個人の単一事例であり、すべての車両へ一般化はできません。症状だけで偶数段側か奇数段側かを自己判断せず、Honda販売店の点検で対象事象への該当を確認してください。
最初に車検証の「初度登録年月」を見て、初度登録日から9年を過ぎていないか確認してください。そのうえで車台番号を下表と照合します。
| 型式 | 対象車台番号 | Honda記載の製作期間 |
|---|---|---|
| DAA-GM4 | GM4-1000043〜GM4-1025312 | 2014年11月12日〜2015年9月1日 |
| DAA-GM4 | GM4-1100001〜GM4-1110774 | 2015年9月3日〜2017年6月14日 |
| DAA-GM4 | GM4-1200017〜GM4-1201063 | 2017年6月23日〜2017年8月26日 |
| DAA-GM4 | GM4-5000003〜GM4-5000052 | 2014年12月5日〜2015年8月22日 |
| DAA-GM4 | GM4-5100001〜GM4-5100023 | 2015年9月30日〜2017年4月24日 |
| DAA-GM5 | GM5-1000032〜GM5-1003759 | 2014年11月12日〜2015年9月1日 |
| DAA-GM5 | GM5-1100001〜GM5-1101963 | 2015年9月3日〜2017年6月9日 |
| DAA-GM5 | GM5-1200017〜GM5-1200148 | 2017年6月23日〜2017年8月11日 |
| DAA-GM5 | GM5-5000001〜GM5-5000016 | 2014年12月5日〜2015年6月30日 |
| DAA-GM5 | GM5-5100001〜GM5-5100009 | 2015年11月6日〜2017年5月29日 |
Honda公式には、対象範囲の一部に案内対象ではない車両が含まれること、製作期間と購入時期は異なる場合があることも記載されています。最終判断はHonda販売店へ依頼してください。
| 初度登録 | 9年保証満了の目安 |
|---|---|
| 2014〜2015年 | 2023〜2024年・通常は満了 |
| 2016年 | 2025年・通常は満了 |
| 2017年 | 2026年・順次満了 |
| 2018年 | 2027年の可能性あり。ただし対象車台番号に入る在庫車等に限る |
2026年7月時点では、対象範囲のうち2017年後半に初度登録された車などが期限内の可能性があります。2019年以降の車は通常、Hondaが示す対象製作期間外ですが、年式だけで判断せず車台番号を確認してください。
Hondaは、保証継承手続きがされていない場合でも無償修理すると明記しています。中古購入の2オーナー目以降でも、対象車・期限・診断条件を満たす可能性があります。
保証延長はリコールとは別区分です。Hondaの保証期間延長ページで対象範囲を確認し、リコール等情報対象車両検索では未実施の市場措置も併せて確認してください。
いま売ったらいくらになるか
保証対象外または期限切れで有償修理になるなら、見積と同じ時点で現状査定を取ります。2026年7月6日に確認できた、正常稼働車を中心とする参考実績は次のとおりです。
| 年式・条件 | 査定実績 | データ時点 |
|---|---|---|
| 2020年・HV LX Honda SENSING・5万〜6万km | 約94.3万円 | 2026年4月 |
| 2019年・EX Honda SENSINGブラックスタイル・4万〜5万km | 約100.6万円 | 2026年4月 |
| 2016年・ハイブリッドEX・5万〜6万km | 約57.1万円 | 2026年4月 |
| 2016年・ハイブリッドDX・5万〜6万km | 約34.5万円 | 2026年4月 |
| 2015年・ハイブリッドLX・5万〜6万km | 約56.8万円 | 2026年4月 |
| 2015年・ハイブリッドEX・4万〜5万km | 約40.7万円 | 2026年4月 |
一括査定.comが公開する個別取引データから抜粋したものです。1件ごとの実績であり、その価格での売却を保証しません。グレード、FF・4WD、走行距離、修復歴、地域、色、警告灯、走行可否で査定は変わります。
後期の上位グレードでは100万円前後の実績がある一方、保証延長対象の中心となる初期型には30万〜50万円台の例があります。年式だけで広い相場レンジを当てはめず、故障状態を伝えた自分の車の現状査定を取ってください。
いまの買取額を確認する(無料)
修理見積と並べる「もう1枚の数字」です。売るかどうかは、金額を見てから決めれば大丈夫。
※査定は無料。金額を確認してから売却するかどうかを選べます。
直すか売るかの判断基準
保証が使えず修理見積が出たら、査定額と今後の保有期間を並べます。次の比率は法律や業界基準ではなく、家計判断を揃えるためのCAR FILEの編集上の目安です。
| 状況 | 判断の目安 |
|---|---|
| 修理費が現状査定の50%未満で、あと3年以上乗る | 修理を検討しやすい |
| 修理費が現状査定の50〜100% | 車検・タイヤ・バッテリー等を含む2年総額で再計算 |
| 修理費が現状査定を超える | 売却を含めて比較する価値が高い |
DDC交換を35万円と仮定すると、査定100万円なら35%、60万円なら約58%、35万円なら100%です。
- 後期・低走行・上位グレードで査定100万円: 修理を検討しやすい。保証対象外でも、他の整備予定を確認して長く乗る選択肢が残る
- 初期型・状態良好で査定60万円: 分岐点。次回車検や消耗品を含む2年総額で比較
- 初期型・過走行で査定35万円: 修理費が車両価値へ並ぶため、売却も現実的
同じi-DCD故障でも、車種と個体の残存価値で結論は変わります。フィット3、ヴェゼル、シャトル、フリード、ジェイドの記事と比べても、車名だけで「修理」「売却」を決めることはできません。
修理費は、そのまま査定へ上乗せされるとは限りません。直すなら乗り続けるため、売るなら修理前の現状査定も取るのが基本です。35万円をあと4年乗る費用と考えると、月あたり約7,300円です。
i-DCD全体の欠点・寿命・搭載車一覧は、ホンダi-DCD(7速DCT)の欠点・寿命・搭載車まとめで横断的に確認できます。車種別の判断とあわせて見ると、保証・修理費・査定額の位置づけが整理しやすくなります。
故障したままでも査定を取る意味
警告灯点灯や不動車でも、車両全体の価値が必ずゼロになるわけではありません。年式、装備、外装、他の機関、再販や部品需要を評価できる業者があります。ただし、グレイスなら故障車でも必ず高く売れるとは断定できません。
査定時には次の情報を先に伝えます。
- トランスミッション警告の表示内容と発生日
- 現在、自走できるか
- Honda販売店の診断結果と見積書
- DDC保証延長の対象・期限・適用可否
- リコール、サービスキャンペーンの実施状況
ディーラー下取り、一般買取、故障車を扱う業者では評価方法が異なるため、複数の現状査定を比較してください。海外再販や部品価値を評価する業者もありますが、すべての車に高値が付くわけではありません。
国民生活センターは、自動車売却で契約後に査定額を減らされた相談例を紹介しています。車の売却にはクーリング・オフがないため、減額条件、キャンセル条件、車両引き渡し日、入金日を契約前に確認してください。
動かない・直さないまま手放す場合
故障車・不動車は専門業者のほうが話が早く、引き取り費用を払う側に回る必要は基本的にありません。
※申込後に確認の電話が入ります。日中つながる番号だとスムーズです。提示額と引取・キャンセル条件を確認してから、正式に返事をすれば大丈夫です。
よくある質問
Q. ガソリン車のグレイス(GM6/GM9)も対象ですか?
対象外です。この保証延長はi-DCDを搭載するハイブリッド車の特定車台番号が対象で、グレイスではDAA-GM4/GM5の対象範囲が示されています。
Q. 9年以内でも保証対象外と言われることはありますか?
あります。対象車台番号と期限に加え、Honda販売店の診断で偶数段側の対象事象に該当することが必要です。奇数段側や制御系など別原因の場合、この保証延長の対象にならないことがあります。
Q. 中古で買った2オーナー目でも保証延長を使えますか?
Hondaは、保証継承手続きがされていない場合でも無償修理すると明記しています。ただし、対象車台番号、初度登録から9年、販売店で確認される偶数段側の対象事象という条件があります。
Q. 自分の車が対象かどう調べればよいですか?
車検証で初度登録年月と車台番号を確認し、Honda公式の対象表と車台番号検索を併用します。対象の可能性があり、気になる症状がある場合は、症状を伝えて販売店へ点検を相談してください。
まとめ:対象車なら保証確認、その後に見積と査定

グレイスハイブリッド(GM4/GM5)のDDC保証延長は、全車一律ではありません。まず車検証で初度登録年月と車台番号を確認し、期限内の可能性があればHonda販売店へ症状を伝えて診断を依頼します。奇数段側など別原因の場合は、この保証延長の対象にならないことがあります。
対象外・期限切れで有償修理なら、同系統の30万円台修理例を参考にグレイスの確定見積を取ってください。同時に、故障状態を正直に伝えた現状査定を取り、今後2年の維持費と残りの保有予定を加えて比較します。
順番は、安全確保→対象車台番号→9年期限→Hondaの診断→有償なら修理見積と現状査定です。後期上位グレードなど車両価値が高く残る個体は修理、初期型・過走行で次の出費が重なる個体は売却という傾向はありますが、最終判断は自分の車の数字で決めます。
いまの買取額を確認する(無料)
修理見積と並べる「もう1枚の数字」です。売るかどうかは、金額を見てから決めれば大丈夫。
※査定は無料。金額を確認してから売却するかどうかを選べます。
