事故で車が壊れて、修理工場から見積もりが出た。保険会社からも連絡が来た。でも、直すべきなのか、このまま手放すべきなのか、決められない。
この記事は、そういう方のために書きました。
結論:修理か売却かは、次の3つがそろってから決めてください。
- 修理見積もり(直すといくらかかるか)
- 保険会社の回答(保険でいくら出るか、車をどう扱うか)
- 今の状態での査定額(直さずに売るといくらになるか)
どれか1つだけで決めると、損をしやすくなります。直してしまった後では、直さずに売った場合の金額と比べられません。
迷ったときの目安
- 自分の車両保険で直せて、自己負担(免責金額)と保険料が上がる分が小さい → 修理が有利になりやすい
- 修理代が車両保険金額を超える(全損)→ 保険金の受け取り方と、車の扱いを保険会社に確認してから決める
- 相手の保険からの賠償が時価額止まりで、修理代に届かない(年式が古い車に多い)→ 今の状態で売ることも比べる
- 骨格まで直す(修復歴がつく)→ 直した後の価値の下がり方も比べる
今の状況に合わせて、読み始める場所を選んでください。
| 今の状況 | まずやること | 読む場所 |
|---|---|---|
| 事故が起きたばかり | 救護・警察・保険会社への連絡 | 第1章 |
| 見積もりが出て、迷っている | 3つの資料をそろえて比べる | 第2章・第7章 |
| 保険を使うか迷っている | 自己負担と保険料が上がる分を比べる | 第5章 |
| 売ると決めている | 申し込む前の確認と、車の状態に合った売り先 | 第8章 |
※この記事は、2026年9月27日時点の公式情報をもとにしています。実際に査定を申し込んだ体験談や、実際の査定額は載せていません。保険の内容は会社と契約によって違います。ご自身の契約は、必ず保険会社に確認してください。
1. 事故が起きたばかりなら、先にこの4つ

修理や売却の話は、この4つが済んでからです。
1-1. けが人の救護と、道路の危険を防ぐ
交通事故を起こした運転者は、すぐに運転をやめて、けが人を助け、道路の危険を防ぐ必要があります。これは道路交通法第72条で決まっている義務です。
後続車にぶつけられる二次事故を防ぐため、安全な場所に車を移し、発煙筒や三角停止板を使います。
1-2. 小さな事故でも、警察に届ける
同じ第72条で、警察官への報告も義務になっています。日本損害保険協会も、事故の大きさにかかわらず必ず警察に連絡するよう呼びかけています。届け出をしないと、事故の事実を証明する交通事故証明書が発行されず、後日のトラブルにつながるおそれがあります。
相手がいる事故なら、相手の氏名・連絡先・保険会社・車のナンバーを控えます。ドライブレコーダーの映像や、事故の状況のメモも残しておきます。
1-3. 保険会社に連絡する。その場で示談しない
保険会社には、できるだけ早く事故を報告します。
そして、その場で相手と示談をしたり、お金をやり取りしたりしないでください。示談は法律上の和解契約にあたり、いったん成立すると、相応の理由がない限り覆すのは難しくなります(損保ジャパン)。日本損害保険協会も、損害額の見通しが立たないうちに示談すると、後日請求できなくなるなどトラブルのもとになると説明しています。
相手から何か求められたら、「保険会社と相談してから連絡します」と答えてください。
1-4. 動かせない車は、先に保険会社か代理店へ
自分で運転できない車を運ぶとき、ネットで見つけたレッカー業者にすぐ頼むのは待ってください。
国民生活センターは、ネットで見つけた「基本料金3,480円」のロードサービス業者に頼んだところ、作業後に合計約7万円を請求された事例を紹介しています。消費者庁も、ウェブサイトで低額な料金を表示しながら実際には高額な料金を請求する事業者について、注意を呼びかけています。
多くの自動車保険には、ロードサービスが付いています。国民生活センターも、まず契約している保険会社や代理店に問い合わせるよう案内しています。まず保険会社か代理店に連絡して、使えるサービスを確認してください。
2. 修理か売却かは「3つの資料」で決まる

事故の対応が落ち着いたら、判断の材料をそろえます。必要なのは次の3つです。
| 資料 | 分かること | 誰から受け取るか |
|---|---|---|
| ① 修理見積もり | 直すといくらかかるか | 修理工場・ディーラー |
| ② 保険会社の回答 | 保険でいくら出るか、自己負担はいくらか、車をどう扱うか | 自分の保険会社(相手がいる事故なら相手の保険会社も) |
| ③ 今の状態での査定額 | 直さずに売るといくらになるか | 買取店 |
2-1. なぜ3つとも必要なのか
- 見積もりだけでは、保険でいくら出るかが分かりません
- 保険会社の回答だけでは、車にどれだけ価値が残っているかが分かりません
- 査定額だけでは、直した場合と比べられません
2-2. そろえる順番
- 保険会社に事故を連絡する(第1章)
- 修理工場で見積もりを取る(第3章)
- 保険会社から回答をもらう(第4章・第5章)
- 保険会社に「車をどうしてよいか」を確認してから、今の状態での査定額を聞く(第6章)
- 3つを判断表に並べて決める(第7章)
3. 資料① 修理見積もり:修理代の見方と、確認すること

3-1. 見積書は4つに分かれている
国土交通省は2025年3月4日、「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」で、見積書・領収書の標準様式を示しました。修理作業のほか、代車費用などの付随する費用も含めて、作業内容と価格の項目を明らかにするよう修理工場に求めています。見積書は、大きく次の4つに分かれます。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 技術料 | 板金・塗装・部品交換などの作業代 |
| 部品金額 | 交換する部品の代金 |
| 付随作業 | 運転支援システムのセンサーの調整(エーミング)、電子制御の設定、試運転など |
| 諸費用 | 引き取り・納車、レッカー、代車、車の保管など |
見積もりを受け取ったら、4つのうちどれが大きいのかを見てください。同じ指針は、複数の項目を1つの大項目にまとめると、費用の妥当性や透明性が失われるおそれがあると指摘しています。見積書に「一式」とだけ書かれていて中身が分からない場合は、内訳を聞いて構いません。
最近の車は、バンパーやフロントガラスの内側に、自動ブレーキなどのセンサーが付いていることがあります。この場合、部品を交換した後にセンサーの調整(エーミング)が必要になり、その分の費用がかかることがあります。
3-2. 保険で直せるのは「事故前の状態」まで
保険を使って修理する場合、保険金で直せるのは事故の前の状態に戻すところまでです。
ただし、保険金に加えて差額を自分で払えば、それ以上の修理も頼めます。「ついでに別の傷も直したい」という場合は、どこまでが保険で、どこからが自己負担かを工場に確認してください。
3-3. 分解してから、追加の修理が見つかることがある
外から見える損傷だけで見積もりを出しても、部品を外してみたら、内側の骨組みや配管も傷んでいた、ということがあります。最初の見積もりから金額が増えることがあると覚えておいてください。
3-4. 修理期間:公的な目安はありません
「事故車の修理は平均○日」と書いた記事をよく見かけますが、国や業界団体が示した日数の目安は、確認できませんでした。損傷の場所や大きさ、部品の在庫によって、数日で終わることも、数か月かかることもあります。延びる主な理由は次のとおりです。
- 部品の取り寄せに時間がかかる
- 骨組み(フレーム)の修正が必要になる
- 塗料などの材料が不足している
最後の点は、実際に起きています。日本自動車車体整備協同組合連合会は2026年3月31日、塗料やシンナーを取り巻く環境が厳しくなっていることを受け、修理期間の長期化や修理費用の上昇への理解を求める案内を公表しました(日本自動車会議所の報道)。
期間が気になる場合は、工場に「部品はいつ届く予定ですか」「修理が延びそうなとき、連絡はもらえますか」と聞いてください。
3-5. 見積もりを頼むときに聞く3つ
売却も考えているなら、修理工場に車を預ける前に、次の3つを聞いておくと安心です。
| 聞くこと | 理由 |
|---|---|
| 見積もりに費用はかかりますか | 修理しなかった場合に、見積もり料や分解の工賃を請求されることがある |
| 保管料は、いつから発生しますか | 判断に時間がかかると、保管料が増えていく |
| 代車は使えますか。費用は誰の負担ですか | 保険の特約や、相手の保険で出るかどうかで変わる |
3-6. 見積書チェックリスト
- ☐ 技術料・部品金額・付随作業・諸費用に分かれているか
- ☐ 「一式」とだけ書かれた項目の内訳を聞いたか
- ☐ センサーの調整(エーミング)が必要かどうか聞いたか
- ☐ 保険で直す範囲と、自己負担になる範囲を分けてもらったか
- ☐ 追加の修理が見つかったときに連絡をもらえるか確認したか
- ☐ 見積もり料・保管料・代車の条件を聞いたか
4. 資料② 保険会社の回答:自分の保険と相手の保険で、比べる金額が違う

4-1. 保険会社の確認より先に、修理を始めない
保険を使う場合、修理の金額は、保険会社と修理工場の話し合いで決まります。これを協定といいます。保険会社から依頼を受けた調査担当者(アジャスター)が、損傷を確認することもあります。
損傷を確認する前に直してしまうと、損害の確認ができなくなるおそれがあります。修理を始める前に、保険会社に「修理を始めてよいか」を必ず確認してください。
4-2. 自分の車両保険の場合:自己負担と、支払いの上限
自分の車両保険を使う場合、見ておくのは次の2つです。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 免責金額(自己負担) | 契約時に決めた、自分で負担する金額。たとえば「5万円」なら、修理代のうち5万円は自己負担になる |
| 車両保険金額(上限) | 契約時に決めた、保険金の上限。修理代がこれ以上になると「全損」の扱いになる |
保険の「全損」は、修理費が車の時価(車両保険の場合は保険金額)以上になる場合や、修理できない場合などをいいます(ソニー損保)。ソニー損保は、全損になった場合は免責金額を差し引かず、車両保険金額の全額を支払うと説明しています。
「全損」には、修理できない場合だけでなく、修理はできるが費用が上限を超える場合も含まれます。全損と言われても、車が直せないとは限りません。
4-3. 相手がいる事故の場合:賠償は「事故のときの車の価値」が上限
相手の過失で車が壊れた場合、相手(相手の保険会社)に修理代を請求できます。ただし、請求できる金額は、事故のときの車の価値(時価額)が上限です。日本損害保険協会も、修理代が時価額を超える場合は全額を請求できないと説明しています。
ソニー損保は、自分にまったく責任のないもらい事故で、修理費50万円・時価30万円の場合、相手から支払われるのは時価の30万円になる例を示しています。30万円で同程度の車を見つけられる、という損害賠償上の一般的な考え方によるものです。
修理代が時価額を超える状態を、経済的全損といいます。つまり、古い車ほど、相手の保険から出る金額が修理代に届かないことがあります。
ただし、時価額の金額そのものには反論の余地があります。日弁連交通事故相談センターは、保険会社が時価額を調べるときに使う資料の価格で、同じ程度の車を実際に買えるとは限らないと説明しています。納得できない場合は、同じ車種・年式・走行距離の車が中古車市場でいくらで売られているかを調べて、保険会社に示してください。
4-4. 相手の「対物超過修理費用特約」
相手の保険に対物超過修理費用特約が付いていれば、時価額を超えた修理代の一部が補償されることがあります。日本損害保険協会は、一定額(例えば50万円など)を限度に差額を補償する特約を扱う会社もあると説明しています。条件の例は次のとおりです。
| 会社 | 限度額 | 条件の例 |
|---|---|---|
| ソニー損保 | 相手の車1台あたり50万円 | 修理費と時価額の差額に過失割合を掛けた額。事故日の翌日から6か月以内に修理した場合 |
| 東京海上日動 | 相手の車1台あたり50万円 | 事故日の翌日から6か月以内に修理を行った場合に限る |
この特約は、実際に修理した場合に支払われるのが基本です。直さずに売る場合は対象にならないことがあります。相手の保険会社に、特約が付いているかと、その条件を聞いてください。
4-5. 「修理したら価値が下がった分」は、認められにくい
修理しても車の価値が下がることを、評価損(格落ち)といいます。日本損害保険協会は、修理技術の発達でほとんどの場合は原状回復ができるようになり、格落ち損害が発生するケースは少なくなっていると説明しています。
「修理すれば、下がった分も相手から取れる」とは考えないでください。
4-6. 保険会社に聞くこと(そのまま使えます)
- 保険金はいくら出る見込みですか。自己負担はいくらですか。
- この事故は、全損の扱いになりますか。
- 修理を始めてよいですか。
- 保険を使った場合と使わない場合で、来年以降の保険料はいくら違いますか。
- 車を修理せずに売ることを考えています。車を売ってもよいですか。その場合、保険金はどうなりますか。
- (相手がいる事故の場合)相手の保険に、対物超過修理費用特約は付いていますか。
5. 車両保険を使うか、使わないか:自己負担の計算

5-1. 保険を使うと、保険料が上がる
事故で保険金を受け取ると、1事故につき等級が3つ下がります。日本損害保険協会によると、事故のあった人には3年間、割引の少ない料率が使われ、3年間事故がなければ、無事故の人と同じ割引率に戻ります。
盗難や台風・洪水などで車両保険金を受け取った場合は、1事故につき1等級下がる扱いです(同協会)。
5-2. 比べ方
保険を使うかどうかは、次の2つを比べて決めます。
| 選び方 | 自己負担 |
|---|---|
| 保険を使わない | 修理代の全額 |
| 保険を使う | 免責金額 + 保険料が上がる分(元の割引率に戻るまでの合計) |
修理代が小さいと、保険を使わないほうが負担が少なくなることがあります。逆に、修理代が大きいほど、保険を使う意味が大きくなります。
5-3. 保険料が上がる分は、保険会社に試算してもらう
「保険料がいくら上がるか」は、契約・等級・保険料の改定によって変わるので、自分で正確に計算するのは難しいです。保険会社か代理店に「使った場合と使わない場合の保険料を比べたい」と伝えてください。
会社によっては、いったん保険を使う手続きをした後でも、最終的に保険金を請求しなければ等級が下がらない扱いにできる場合があります。取り消せるかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。
6. 資料③ 今の状態での査定額:修理する前に取る

6-1. 直した後では、比べられない
3つ目の資料が、直さずに今の状態で売ったらいくらになるかです。これは修理を始める前にしか分かりません。直してしまった後では、「直さずに売っていたらいくらだったか」は、もう分からないからです。
「売るかどうか決めていないのに、査定を頼んでいいの?」と思われるかもしれません。大丈夫です。査定は、判断の材料をそろえるためのものです。「修理か売却か迷っているので、金額を知りたい」と最初に伝えておけば、話が早く済みます。ただし、金額を聞くことと、その金額を承諾することは別です。承諾の返事は、比べ終わってからにしてください(第9章)。
6-2. 修理すると「修復歴」がつくことがある
車の骨組み(骨格)を直したり交換したりすると、その車は修復歴車になります。自動車公正取引協議会の規約で、骨格とされている部位は次のとおりです。
- フレーム(サイドメンバー)、クロスメンバー、フロントインサイドパネル
- ピラー(フロント・センター・リア)、ダッシュパネル
- ルーフパネル、フロアパネル、トランクフロアパネル
中古車として売られるときは、修復歴の有り無しを表示することになっています。一方で、バンパーを交換した、ドアのへこみを直した、という程度なら、修復歴にはなりません。名前を覚える必要はありません。見積書に上の部位が入っているかどうかを、工場に聞けば分かります。
6-3. 修復歴で査定がいくら下がるかは、決まっていない
「修復歴がつくと査定が○割下がる」と書いた記事がありますが、国や業界団体が公表している下落率は、確認できませんでした。車種・年式・損傷の場所によって違います。だからこそ、修理する前の査定額と、修理した場合の見込みを、実際に聞いて比べるのが確実です。
6-4. 査定を頼むのは、保険会社に確認してから
全損の保険金を受け取る場合などは、車が保険会社のものになることがあります(7-3)。査定を頼む前に、保険会社に「この車を売ってもよいか」を確認してください。
とくに注意したいのが、修理工場に預けたまま、その場で売ってしまうケースです。日本自動車購入協会(JPUC)には、自損事故で走れなくなった車を入庫先と売買契約した後、保険会社が全損と認定して車を引き揚げることになり、キャンセルを申し出たら違約金を請求された、という相談が寄せられています。
6-5. 走れる程度の損傷なら、契約条件がはっきりした買取店で金額を聞く
自分で運転できる程度の損傷なら、ふつうの買取店で査定してもらえます。事故の車は、査定の後に修理の跡や不具合が見つかって、減額やキャンセルの話になりやすい車です。契約後の減額やキャンセルの条件が、はっきりしている買取店を選ぶと安心です。
事故で大きく壊れていて、そのままでは使えない車は、事故車専門の買取が向いています(第8章)。
契約後の条件まで確認して、売却先を決める
初めての売却で減額やキャンセル条件が不安な方は、契約条件が明示された直接取引も比較候補になります。
査定・契約は1社との直接取引です(複数社の競争にはなりません)。その代わり、契約後の減額は行わず、車両引渡しから7日間は電話1本・無料でキャンセルできると公式に宣言されています。契約金の半額当日前払いには上限50万円・時間帯・店舗などの条件があります。
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7. 修理・今の状態で売る・廃車の判断表

3つの資料がそろったら、次の表に書き込んで比べてください。この記事でいちばん大事な表です。
7-1. 判断表
| 比べること | 修理して乗る | 今の状態で売る | 廃車にする |
|---|---|---|---|
| 出ていくお金 | 修理代 − 保険金(=自己負担)+ 保険料が上がる分 + 修理中の代車・保管料 | 引き取りの費用(かかる場合) | 処分・引き取りの費用(かかる場合) |
| 入ってくるお金 | —(保険金は修理代にあてる) | 買取額 + 受け取れる保険金(扱いは7-3) | 戻ってくる税金など + 受け取れる保険金(扱いは7-3) |
| 手元に残るもの | 直った車(骨格を直すと修復歴がつき、価値が下がることがある) | お金(次の車の費用は別に必要) | お金(次の車の費用は別に必要) |
| 車を手放してよいか | — | 保険会社・車検証の所有者に確認 | 保険会社・車検証の所有者に確認 |
| 次の車がすぐ必要か | 修理期間中の足をどうするか | 次の車の購入と時期を合わせる | 次の車の購入と時期を合わせる |
修理代だけ、買取額だけを見て決めないでください。「出ていくお金」「入ってくるお金」「手元に残るもの」の3つで比べます。
廃車にした場合に戻るお金(自動車税・自賠責保険・重量税)と、売却との違いは、事故で廃車と言われた車は売れる?処分費用と買取を比較にまとめています。
7-2. 計算例(説明用の仮の数字です)
自分の車両保険(免責金額5万円)が使える事故で、修理見積もり80万円、保険会社に試算してもらった「保険料が上がる分」が3年間で合計12万円、今の状態での査定額が30万円だったとします(全損にはならず、売る場合は保険金を受け取らない前提)。
| 選び方 | お金の動き | 手元に残るもの |
|---|---|---|
| 保険を使って修理する | 出ていくお金:5万円 + 12万円 = 17万円 | 直った車 |
| 保険を使わずに修理する | 出ていくお金:80万円 | 直った車 |
| 今の状態で売る | 入ってくるお金:30万円 | お金(次の車の費用が別に必要) |
この例では、これからもこの車に乗るつもりなら、17万円の負担で車を戻せる「保険を使って修理する」が有利になりやすい、と読めます。一方、もともと買い替えを考えていたなら、30万円を次の車の資金にする選択もあります。実際の金額は、3つの資料で確かめてください。
7-3. 保険金と売却代金は、両方受け取れるとは限らない
ここは誤解が多いところです。JPUCは、保険会社から全損と認定された場合、保険会社が保険金の支払いと引き換えに車を引き揚げる可能性があり、その場合は買取業者などに売ることはできないと説明しています。これは保険法第24条の「残存物代位」に関係する扱いで、契約の条件や、車を手元に残す合意によって扱いは変わります。
| 場面 | 車はどうなるか |
|---|---|
| 自分の車両保険で、全損の保険金を受け取る | 保険会社が車を引き揚げることがある。車を手元に残せるか、残す場合に保険金がどうなるかは保険会社に確認 |
| 相手の保険から、全損として賠償を受ける | 自分が被害者の事故でも、相手の保険会社が全損の車を引き揚げることがある(JPUC) |
| 全損ではない(修理代が上限に届かない)が、修理せずに売る | 保険金がどうなるかは、保険会社と契約によって違う。保険会社に確認 |
保険金の手続きが終わっていない段階で、車を売ったり廃車にしたりしないでください。必ず先に保険会社へ確認してください。
8. 売ると決めたら:申し込む前の確認3点と、車の状態別の売り先

8-1. 申し込む前に、この3つを確認してください
確認① 事故の損傷が、今も大きく残っているか
外装や、エンジンなどの機関に、大きな損傷が残っているかどうかです。すでに修理した車は「修復歴車」で、事故車の専門店ではなく、ふつうの買取店のほうが向いています。
確認② そのままでは使えない状態か
自分で運転できて損傷も軽いなら、ふつうの買取店でも査定してもらえます(6-5)。
確認③ 売ってよい状態か
- 保険会社に、車を売ってよいか確認しましたか(7-3)
- 車検証の所有者は、あなたですか
車検証の所有者の欄が、ローン会社や販売店になっていることがあります(所有権留保)。この場合は、ローンを精算して所有権を外す手続き(所有権解除)が必要です(JPUC)。残価設定ローン(残クレ)の車も同じです。まずは購入した販売店か、車検証の所有者欄にある会社に問い合わせてください。
8-2. 車の状態別の売り先
| 車の状態 | 向いている売り先 |
|---|---|
| 事故で外装や機関が大きく壊れ、そのままでは使えない | 事故車の専門買取(タウ。8-3)。年式が古い・走行距離が多い車は、廃車買取にも金額を聞く |
| 事故歴はないが、故障している・古い・走行距離が多い・動かない | 故障車・不動車も扱う買取(カーネクスト。8-4) |
| 損傷が軽く自分で運転できる、または修理済み(修復歴車) | ふつうの買取店(6-5・車の状態別の買取サービスガイド) |
| どちらか迷う・金額を比べたい | 両方に聞く(比べられるのは契約の前だけです) |
8-3. 事故で大きく壊れた車なら、事故車専門のタウ
タウは、事故で壊れた車の買取を専門にしている会社です。海外への販売ルートを持っており、日本では乗れなくなった車でも値が付くことがあるのはこのためです。特に新しい年式の車を高値で引き取っているとしています(同社「よくある質問」)。同社の説明で確認できる点は次のとおりです。
- 一部離島を除き、全国で出張査定を無料で行っている。レッカーや名義変更の費用もかからないとしている
- 事故車が修理工場に入っている場合は、保管先に連絡して査定に行く。立ち会いは不要で、査定額は電話で知らせる
- 最短で、依頼の翌日に引き取る
- 査定後に提示した金額からの減額はない(契約後、価格提示時から車両の形状・仕様等が大きく変わった場合は別。規約第17条)
- 代金は、引き取り完了から1〜2週間後に振り込む
申し込む前に、利用規約(2024年11月26日改訂版)の次の点も知っておいてください。
| 場面 | タウの規約 |
|---|---|
| 金額を聞いて、承諾しなかった場合 | 費用はかからない(査定は原則無料) |
| 承諾したのに、契約しなかった場合 | 査定手数料として1台20,000円(第8条)。承諾は、書面・電話(口頭)・メールのどれでも成立する |
| 契約した後のキャンセル | 契約から1週間以内なら買取額の10%。1週間を過ぎると解約できない |
| 書類の提出が遅れた場合 | 指定の期日から7営業日を過ぎても出さないと、解約されたうえでペナルティ50,000円 |
| 契約成立後から引き渡しまで | 価格提示時から車両の形状・仕様等が大きく変わった場合、減額・契約解除や返金の対象となることがある(第17条) |
つまり、「金額を聞く」と「承諾する」を分けてください。金額を聞くだけなら無料です。修理した場合の負担(第7章)や、ほかの売り先の金額と比べてから、承諾の返事をしてください。
事故で大きく壊れた車は、廃車にする前に事故車専門の買取額を確認
修理工場で「廃車」と言われた車でも、事故車専門の買取なら値が付くことがあります。
次に当てはまる方が対象です
- 事故の損傷が今も大きく残り、そのままでは使えない
- 保険会社と車検証の所有者に、売ってよいことを確認した
- 連絡はタウ1社だけ(一括査定ではありません)
- 立ち会い不要。修理工場に置いたままでも査定を依頼できる(同社の説明)
- 出張査定・レッカー・名義変更の費用はかからない(一部離島を除く。同社の説明)
金額を聞くだけなら無料です。ただし、提示された金額を承諾した後に契約しないと、査定手数料20,000円がかかります(同社規約第8条)。承諾は書面・電話・メールのどれでも成立します。返事は、ほかの売り先や廃車にした場合の手取りと比べてからにしてください。
WEBで無料査定を申し込む(査定額はタウから電話で届きます)
承諾の返事は、比べてからで大丈夫です。
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8-4. 事故歴のない故障車・動かない車なら
カーネクストは、低年式・過走行・故障車・不動車も0円以上で買い取るとうたっており、引き取りのレッカー代と廃車手続きの代行費用はかからないとしています(一部離島を除く。同社の説明)。修理工場やディーラーに預けている場合は、その場所からの引き取りに対応できるかを、申し込むときに確認してください。
カーネクストの利用規約には、申し込み後に契約を解除する場合、手数料として一律30,000円を負担すると書かれています。契約になる時点を最初の電話で確認し、比べ終わるまでは「考えます」と伝えてください。
動かせない車・値が付きにくい車は、処分費用を払う前に買取額を確認
自走できない車や車検切れの車も、廃車の費用を払う前に買取の条件を確かめてください。査定額だけでなく、引き取りと書類手続きの条件まで比べるのがポイントです。
次に当てはまる方が対象です
- 自走できない・車検切れ・年式が古いなど、ふつうの買取店で値が付きにくい
- 保険会社と車検証の所有者に、手放してよいことを確認した
- 査定・引き取り・手続きの費用は無料と案内(一部離島を除く)
- 金額を聞いたら「考えます」と伝え、比べてから返事をして大丈夫です
申込後、電話で査定額の案内があります。電話で売却の意思を伝えると契約(成約)となり、利用規約上、申込後に契約を解除すると一律30,000円の手数料がかかります。返事は比べ終わってからにしてください。引き取りの対象地域・車両の条件、入金の時期は申込先でご確認ください。
走れる故障車・古い車・走行距離が多い車の場合
動かない車・廃車を考えている車の場合
査定は無料です。返事は比べてからで大丈夫です。
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9. 契約する前に知っておくこと

9-1. 査定の電話で使えるひと言
電話で金額を聞いたときに「それでお願いします」と答えると、承諾や契約として扱われることがあります。タウのように、承諾しただけで費用が発生する条件を決めている会社もあります(8-3)。比べ終わるまでは、次のように伝えてください。
- 「今日は金額を聞くだけです。修理した場合と比べてから、こちらから連絡します」
- 「この金額には、何が含まれていますか」
- 「契約になるのはどの時点ですか。その後にキャンセルすると、いくらかかりますか」
9-2. 車の売買に、クーリング・オフはありません
業者に自宅へ来てもらって売る場合でも、車の売却は特定商取引法の規制の対象外です(国民生活センター、消費者庁)。
比べられるのは、契約する前だけです。その場で決めるよう言われても、「ほかの見積もりと比べてから決めます」で大丈夫です。
9-3. 事故や修理のことは、知っている範囲で正直に伝える
JPUCは、事故歴・修復歴だけでなく、使っていて気になる点や不具合も、査定のときに正しく伝えるよう案内しています。
一方で、国民生活センターは、修復歴や事故歴をあらかじめ伝えていた場合、後からそれを理由にした解除や減額に応じる必要はないとしています。伝えるべきことを伝えておくことが、後からのトラブルを防ぐいちばんの方法です。
10. 修理を選んだ人へ:修理が終わったら残しておくもの

修理を選んだ場合も、あとで役に立つことがあります。
10-1. 精算見積書を確認する
修理が終わったら、最初の見積もりと、最終的な精算の金額を見比べてください。追加の修理があった場合は、何を直したのかを確認します。保険を使った場合は、保険会社と工場が決めた金額(協定額)と合っているかも確認します。
10-2. センサーの調整などの記録をもらう
自動ブレーキなどのセンサーの調整(エーミング)をした場合は、その記録をもらっておきます。
10-3. 修理の明細は、捨てずに保管する
将来この車を売るとき、どこをどう直したかを正確に伝えるためです。第9章のとおり、知っている事故や修理のことは、査定のときに伝える必要があります。明細があれば、正確に伝えられます。
11. よくある質問
自分で運転できない車でも、査定を頼めますか?
頼めます。タウは、事故車が修理工場に入っている場合は保管先に連絡して査定に行き、立ち会いは不要としています(同社「よくある質問」)。事故歴のない故障車・不動車なら、カーネクストも扱っています。預け先からの引き取りに対応できるかは、申し込むときに確認してください。
修理工場に預けたままでも売れますか?
売れます。ただし、見積もり料・分解の工賃・保管料がかかることがあるので、先に工場に確認してください(第3章)。保険を使う予定がある場合は、入庫先と売買契約をする前に、保険会社に「売ってよいか」を確認してください(6-4)。
保険金と売却代金は、両方もらえますか?
全損の保険金を受け取る場合は、保険会社が車を引き揚げることがあり、その場合は売れません。どちらの場合も、先に保険会社に確認してください(7-3)。
修理した車(修復歴車)はどこに売ればいいですか?
事故車の専門店ではなく、ふつうの買取店のほうが向いています。修理した内容は、査定のときに伝えてください。売り先の比べ方は、車の状態別の買取サービスガイドにまとめています。
水没した車も、事故車の買取店に頼めますか?
頼める店があります。タウは、水害車の査定にも対応しています(同社の説明)。ただし先に、保険会社に連絡してください。台風や洪水による損害は、車両保険で補償される場合があり、その場合の等級の下がり方は1等級です(日本損害保険協会)。
相手の保険会社から「時価額までしか払えない」と言われました
事故のときの車の価値(時価額)が賠償の上限になるのは、一般的な考え方です(4-3)。ただし、時価額の金額そのものには、反論できる余地があります。同じ車種・年式・走行距離の車の中古車価格を調べて示してください。相手の保険に対物超過修理費用特約が付いていないかも確認します(4-4)。
12. まとめ

- 事故が起きたばかりなら、救護・警察・保険会社への連絡が先。その場で示談しない
- 3つの資料をそろえる:修理見積もり、保険会社の回答、今の状態での査定額
- 判断表で比べる:出ていくお金、入ってくるお金、手元に残るもの
- 保険金の手続きが終わる前に、車を売ったり廃車にしたりしない
- 金額を聞くのと、承諾するのは別。承諾の返事は、比べ終わってから
家族や知人が事故にあったときにも使えるよう、第2章の「3つの資料」と第7章の判断表だけでも保存しておくと安心です。
事故で大きく壊れた車は、廃車にする前に事故車専門の買取額を確認
金額を聞くだけなら無料です。ただし、提示された金額を承諾した後に契約しないと、査定手数料20,000円がかかります(同社規約第8条)。承諾は書面・電話・メールのどれでも成立します。返事は、ほかの売り先や廃車にした場合の手取りと比べてからにしてください。
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承諾の返事は、比べてからで大丈夫です。
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売買契約書にサインする前に、この8つを確認してください
口頭の説明だけで判断せず、契約書に書かれた条件と一致しているか確認してください。
- 金額を承諾しただけで費用が発生する条件はないか(電話で「お願いします」と答えただけで承諾・契約になる場合があります)
- キャンセルできる期限はいつまでか(「契約後」か「車両引渡し後」かで大きく違います)
- キャンセル料・違約金はいくらか(金額が書かれていない場合は必ず質問を)
- 契約後に減額される条件は何か(「後日、修復歴が判明した場合」等の条項の有無)
- 入金はいつか(「引渡し後○営業日」の形で書面に残っているか)
- 申告した内容が書面に反映されているか(故障・警告灯・修復歴・水没・改造は口頭で伝えるだけにしない)
- 名義変更はいつ完了し、その報告はもらえるか(税金・違反通知のトラブル防止)
- ローン残債がある場合、精算方法と所有権解除の手順
車の売却は、訪問購入のクーリング・オフ対象外となる場合があります。「会社が有名だから安心」ではなく、契約書に書かれている条件がすべてです。キャンセル料や違約金を請求された場合は、その内訳と根拠を書面で求めてください。判断に迷う場合は、国民生活センターやJPUC(日本自動車購入協会)の相談窓口も利用できます。
この記事の根拠について
| 内容 | 確認先 |
|---|---|
| 事故のときの救護・危険防止・警察への報告 | 道路交通法第72条 |
| 事故の大きさにかかわらず警察に連絡すること | 日本損害保険協会「交通事故直後から示談までの流れ」 |
| その場で示談しないこと | 損保ジャパン「示談とは何ですか?」/日本損害保険協会 損害保険Q&A 問32 |
| ロードサービスのトラブル | 国民生活センター(2023年7月19日)/消費者庁 |
| 見積書の標準様式と項目 | 国土交通省「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」(2025年3月4日)/報道発表 |
| 塗料不足による修理期間の長期化 | 日本自動車会議所(日本自動車車体整備協同組合連合会の2026年3月31日の案内を報道) |
| 保険の「全損」の意味 | ソニー損保 |
| 全損のときの免責金額と支払い | ソニー損保「車両保険の免責金額とは?」 |
| 賠償は時価額が限度、格落ち損害、差額を補償する特約 | 日本損害保険協会 損害保険Q&A 問43 |
| もらい事故で時価額が支払われる例 | ソニー損保 |
| 経済的全損と、時価額の算定 | 日弁連交通事故相談センター |
| 対物超過修理費用特約 | ソニー損保/東京海上日動 |
| 等級と事故有係数適用期間、1等級ダウン事故 | 日本損害保険協会 損害保険Q&A 問23 |
| 修復歴の骨格部位 | 自動車公正取引協議会 |
| 全損で保険会社が車を引き揚げる可能性、所有権解除 | 日本自動車購入協会(JPUC)相談事例/保険法第24条 |
| 入庫先との売買契約後に全損で引き揚げ、違約金を請求された事例 | JPUC相談事例 |
| 査定のときの申告 | JPUC「安心して車を売却するために」 |
| 車の売却はクーリング・オフの対象外、減額に応じる必要がない場合 | 国民生活センター「増加する中古自動車の売却トラブル」/消費者庁 |
| タウの査定手数料・キャンセル・書類 | 株式会社タウ「ご利用規約」(2024年11月26日改訂) |
| タウの出張査定・立ち会い・修理工場での査定・引き取り日・年式・販売ルート | 株式会社タウ「よくある質問」 |
| タウの減額・振込時期・水害車の査定 | 株式会社タウ公式サイト |
| カーネクストの契約解除の手数料 | 株式会社カーネクスト「利用規約」 |
保険の内容は、会社と契約によって違います。この記事は定期的に見直していますが、ご自身の契約は保険会社に、売買の条件は契約書で、必ず確認してください。
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